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コラム

運動と双極症――歩くことが気分に与える影響を研究から見る

このページは一般的な情報提供と、開発者個人の体験の共有を目的としています。運動療法を治療に取り入れる場合は、必ず主治医に相談してから始めてください。とくに躁・軽躁状態のときの激しい運動には注意が必要とされています。

気分が落ち込んでいるとき、「体を動かした方がいいのは分かっているけれど、そんな気力がない」と感じることは少なくありません。それでも、少し歩いてみると、思ったより体が動いて、気持ちが軽くなることがあります。ここでは、運動・ウォーキングと双極症の関係について、研究から分かっていることを紹介します。

運動が気分の症状に与える影響

2025年に発表された系統的レビュー・メタ分析では、運動を取り入れた介入によって、双極症の患者のうつ症状と不安症状が有意に改善したと報告されています。一方で、躁症状に対しては明確な効果が確認されていません。研究の質はまだ「低い」と評価される段階ですが、うつ症状・不安症状に対しては運動が助けになる可能性が示されています[1]

双極症のうつ状態にある患者を対象にした小規模な研究(オープンラベル・予備的研究)でも、運動プログラムに取り組んだ患者で気分の改善がみられ、躁症状を悪化させることなく、抗うつ的な効果が得られた可能性が示唆されています[2]

ウォーキング(歩くこと)の効果

うつ症状・不安症状全般を対象にした系統的レビュー・メタ分析では、ウォーキングが不活発な対照群と比べて、うつ症状・不安症状を有意に軽減させることが報告されています。入院中に定期的にウォーキンググループへ参加した人は、参加しなかった人と比べて抑うつ・不安・ストレスのスコアが低かったという報告もあります[3]。双極症に限定した研究ではありませんが、気分の不調全般に対してウォーキングが持つ効果を示す材料のひとつと言えます。

「1万歩」にこだわりすぎなくていい

「1日1万歩」という目標はよく耳にしますが、これはもともと科学的な根拠に基づいて決められた数字というより、歩数計の普及とともに広まった目安のひとつです。うつ状態で気力がないときに「1万歩」を最初から目指すと、かえってハードルが高く感じられてしまうこともあります。まずは少しの距離から歩いてみて、歩けた分だけ自分を認める、というくらいの気持ちで十分だと思います。

血流と体調の関係について

運動によって全身の血流が良くなることは広く知られており、体調の回復を実感するという声もよく聞かれます。運動が気分に良い影響を与える仕組みについては、血流の変化のほか、脳内の神経伝達物質や炎症反応への影響など、複数の要因が研究されている段階です。まだ全てが解明されているわけではありませんが、体を動かすことが心身に何らかの良い変化をもたらす可能性は、多くの研究で示唆されています。

無理のない範囲で、できることから

うつ状態のときは、外出すること自体が大きなハードルになります。「歩けそうな日に、歩けるだけ歩く」というくらいの緩やかな向き合い方でも十分だと思います。逆に躁・軽躁状態のときは、活動量が増えすぎて生活リズムが崩れやすい時期でもあるため、激しい運動よりも落ち着いたペースを意識することが大切だと言われています。ご自身の状態に不安がある場合は、運動を始める前に主治医に相談してみてください。

なぎろぐでは、気分と一緒に活動量も記録できます。歩いた日とそうでない日で、気分にどんな違いがあるか振り返ってみるのも一つの方法です。

参考文献

  1. [1] Exercise interventions for depressive, manic, and anxiety symptoms in bipolar disorder: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Psychiatry, 2025. frontiersin.org
  2. [2] Structured physical exercise for bipolar depression: an open-label, proof-of-concept study. International Journal of Bipolar Disorders, 2023. link.springer.com
  3. [3] The Effect of Walking on Depressive and Anxiety Symptoms: Systematic Review and Meta-Analysis. PMC, 2024. ncbi.nlm.nih.gov