気分の波と、腸内環境(腸内フローラ)が関係しているかもしれない、という研究が近年増えています。「うつ状態のときほど食生活が乱れやすい」という感覚がある方も多いのではないでしょうか。ここでは、腸内環境と双極症の関係について研究から分かっていることと、開発者自身が実践している工夫を紹介します。
腸と脳はつながっている(腸脳相関)
腸内細菌と脳は、神経・免疫・内分泌系を介して双方向にやり取りをしていると考えられており、これは「腸脳相関(gut-brain axis)」と呼ばれています。腸内細菌の中には、ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質に関わる物質や、短鎖脂肪酸を作り出すものがあり、これらの信号が迷走神経などを通じて脳に伝わっている可能性が指摘されています[1]。
双極症の患者では腸内細菌の構成が異なるという報告
双極症の患者を対象にした複数の研究で、健康な人と比べて腸内細菌の構成に違いがみられたと報告されています。ただし、どのような違いが見られるかは研究によってばらつきがあり、まだ一貫した結論には至っていません。一方で、治療への反応が良かった患者は、反応が乏しかった患者に比べて、腸内細菌の状態が健康な人に近かったという報告もあり、腸内環境が治療経過と関連している可能性が示唆されています[2]。
プロバイオティクス(乳酸菌など)に関する研究
双極症のうつ状態にある患者を対象に、プロバイオティクス(乳酸菌などの生きた微生物を含むサプリメント)を通常の治療に追加する、プラセボ対照の臨床試験が行われています。こうした研究では、プロバイオティクスの追加によってうつ症状が改善したという報告や、再入院率が下がったという報告もあります[3]。
開発者自身も、主治医から整腸剤(ビオフェルミン)を処方されており、日々の服薬の一つとして続けています。これはあくまで開発者個人の治療の一部であり、他の方に同じものをおすすめする趣旨ではありません。整腸剤やサプリメントを試したい場合は、必ず主治医にご相談ください。
うつ状態のときは、食物繊維が不足しやすい
腸内細菌の中には、食物繊維をエサにして短鎖脂肪酸を作り出す種類がいて、気分の不調とこうした菌の減少が関連しているという報告もあります[1][2]。一方で、うつ状態のときは買い物に行くこと自体が難しく、新鮮な野菜など食物繊維を含む食品を食べる機会が減ってしまう、という悩みを持つ方も少なくないと思います。開発者自身も、調子が悪いときほど食生活が乱れやすいと感じています。
無理なくできる工夫
「野菜をきちんと摂らなければ」と思うほど、できないときに自分を責めてしまいがちです。開発者が実践しているのは、次のような「調子が悪くてもできる」工夫です。
- こんにゃくを買いだめしておく――常温・冷蔵で日持ちがし、食物繊維を手軽に摂れる食品として活用しています。
- 整腸剤を毎日の服薬に組み込む――主治医の指示のもと、他の薬と一緒に習慣化しています。
- 「完璧な食事」を目指さない――買い物に行けない日があっても仕方ない、と割り切ることも大切にしています。
なぎろぐでは、日記欄に食事や体調について自由に書き残すこともできます。「食べられなかった日」も含めて記録しておくと、後から自分のパターンに気づくきっかけになるかもしれません。
参考文献
- [1] A systematic review on gut–brain axis aberrations in bipolar disorder and methods of balancing the gut microbiota. Brain and Behavior, 2023. ncbi.nlm.nih.gov
- [2] Gut microbial clues to bipolar disorder: state-of-the-art review of current findings and future directions. PMC, 2020. ncbi.nlm.nih.gov
- [3] Adjunct therapy with probiotics for depressive episodes of bipolar disorder type Ⅰ: A randomized placebo-controlled trial. Journal of Affective Disorders, 2023. sciencedirect.com